点字ブロック(正式名称「視覚障害者誘導用ブロック」)は,視覚障がい者を安全に誘導するために,地面や床面に敷設されているプレートで,足裏の触感覚や杖で認識できるよう,突起が表面についています.1965年に三宅精一氏によって考案され,1967年,岡山県立岡山盲学校に近い交差点に世界で初めて敷設されました.
1994年ハートビル法,2000年交通バリアフリー法(いすれも通称)が定められ,これを受けて「公共交通ガイドライン」,「道路整備ガイドライン」(いずれも通称)に点字ブロックの設置基準が定められました.
今日では,公共施設や歩道,鉄道の駅だけではなく,民間の商店や施設でも設置が進んでいます.しかし,さまざまな色や形の点字ブロックが普及し,統一を図るために日本工業規格(JIS)は,2001年にJIS T9251(視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列)を定め,点字ブロックの形を規定しました.
そして2012年 点字ブロックの国際規格が,日本のJISを基に定められ,現在では多くの国に広がっています.その規格とはどのようなものか,簡単に紹介いたします.
誘導ブロック(線状突起)
誘導ブロックを図1に示します.線状の突起の方向に視覚障がい者を誘導するように,このブロックを一列に敷き詰めます.JISで定められた主な寸法を図中に示しています.JISでは,その他,突起の間隔や寸法の許容誤差など,細部にわたり基準が決められています.
- 一辺が30cm以上の正方形であり,4本を下限とする棒状の線状突起をブロックの大きさに応じて増やす.
- 棒の長手方向で移動の方向を示す.
- 断面はハーフドーム形をなし,靴の接地面が平面であること.
警告ブロック(点状突起)
警告ブロックを図2に示します.このブロックは,注意を喚起する役割をもっています.階段の手前,横断歩道の手前,誘導ブロックの終端や分岐または方向転換.駅ホームの端近くの場所,案内板の前,エレベータの出入り口等々で使われます.駅ホームでは,図3のような内方線付き警告ブロックが設置されることが多く,内方線側が安全側であることを知らせます.
- 一辺が30cm以上の正方形であり,点状突起の数は25(5×5)点を下限とし、ブロックの大きさに応じて増やす.
- 点状突起の配列は図のような並列配置とする.(縦横の線状にすべての突起が並ぶ)
- 断面はハーフドーム形をなし,靴の接地面が平面であること.
点字ブロックの色については,JISに規定はなく,国土交通省のガイドラインに次のように示されています.
「視覚障害者誘導用ブロックの色は、黄色その他の周囲の路面との輝度比が大きいこと等により当該ブロック部分を容易に識別できる色とするものとする。」
○国土交通省令第百十六号 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第十条第一項の規定に基づき、移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令第34条第2項
現状では,鉄道駅ホームや歩道で,黄色の点字ブロックが設置されていることが多く,鉄道駅でも駅舎内部や商業施設,通路では,デザイン性の観点からか,その他の色が使われているのをよく目にします.その他の色として,シルバー,黒,ベージュ,赤茶などの色を見たことがあります.その環境でその色が適切かどうかは別として,設置に当たっては,デザイン性の観点だけではなく,周囲の地面と点字ブロックとの輝度比が大変重要になります.点字ブロックは全盲の人だけが利用しているわけではなく,弱視者も利用していることを多くの人が理解しなければなりません.
点字ブロックの実際とアプリ
・誘導ブロックが分岐している部分では,警告ブロックが設置されています.
アプリ「点字ブロックは前方にあり,右斜め方向,次に左斜め方向と推定します.警告ブロックを認識しました.ルートは途中に左方向の分岐があります.」
図5 駅ホーム
・図3の内方線付き警告ブロックが設置されています.
アプリ「点字ブロックは前方にあり,右斜め方向と推定します.警告ブロックを認識しました.左側前方に線路があります.ご注意ください.」
・階段の手前や終わりでは,警告ブロックが設置されています.
アプリ「点字ブロックは前方にあり,横方向と推定します.警告ブロックを認識しました.」
・周囲の地面が黄色みのタイルのため,「てんじぶろっく」アプリは,タイルも含めて点字ブロックと認識したことがありました.そこで,プログラム内で使っているパラメータを調整して対応しました.
・暗い色の点字ブロックは,図7とは反対で,認識できないことがあります.
・屋外の点字ブロックは,経年変化により黄色みが失われ,グレーに近くなっています.そのためこのアプリでは認識できません.